私はCROで働いています。もう1年ほどになります。
とはいえ、働くまでは『CRO』と聞いても何のことだか全くわかりませんでした。
CROに入らなければ、医薬翻訳を勉強することもなかったと思います。
そこでCROとは何をしているのか、そして医薬翻訳がどう関係するのかをかなり簡単ではありますが、説明したいと思います。
CROとは
CROとは医薬品開発業務受託機関(Contract Research Organization)のことで、文字通り医薬品の開発業務を受託する機関です。
もっと簡単に言うと、新しく開発した薬や医療機器を世の中に出せるよう頑張る会社のことです。CROは、CROという業種の一つと言っていいかと思います。
例えばA社が新しい薬を開発したとします。これを世の中に出したいのですが、家電製品のように「開発できたから、工場でたくさん作って売り始めよう!」というわけにはいかないのです。
人の命に関わるものですので、「この新薬は、〇〇という病気に有効で、安全性も確認できています。だから、販売してもいいですか?」と国や専門の機関にお伺いを立てて、「いいよ」と言われたら販売できます。

上の図で書いたように、新しい薬や医薬品を世の中に出すまでには動物試験をしたり、実際に人に対して薬・医療機器を使用して有効性・安全性を評価する『治験』を行ったり、申請書など様々な書類を準備したり、という作業が必要です。
でもA社には開発力はあるけれど、開発した薬をどうやって世の中に出せるのかノウハウがありません。治験や申請書をどう書いたらいいかわかりません。
そんな時に、CROという会社にその業務を依頼することがあります。
そしてCROは治験や申請書の作成などをA社の要望に沿って進めていく、という仕事をします。

これが(かなりざっくりですが)CROという会社(業種)の仕事です。
医薬翻訳との関係
薬や医療機器は世界中で開発されています。そこで以下のような会社が存在したとします。
パターンA:日本で開発した製品を、海外に売り出したい
パターンB:海外で開発された製品を日本に売りたい
そんな時にはその国の言語で申請書などを作成しなければなりません。
パターンAであれば日本語から売りたい国の言語に訳して申請、パターンBでは英語から日本語に訳して申請、というように翻訳が必要なのです。
まさにこの場合、医薬翻訳者が活躍するのです。
ちなみに、医薬翻訳は理系の知識が必要です。治験の報告書などは理系の知識がある程度ないと理解することが難しいです。私は一応理系の知識がありますが、それでも依頼される内容によっては全く馴染みがない(というか馴染みがないことがほとんど)ですので、その都度調べまくって理解するということも多いです。
とはいえ、実際の医薬翻訳者さんは文系の方が多いようです。理系の知識はおそらく自分で勉強されているのだと思います。
その点では、理系(特に生物科学系)を学んだ人は有利ですが、逆に理系の人は英語に苦手意識がある人が多い傾向にあるかと思います。(今の若い世代の方々はそうでないのかもしれませんが)
なので、良いように考えれば文系でも理系でも頑張れば医薬翻訳者になれるということですね。もちろん本気でないととても続かない、難しい仕事ではありますが。
ということで、本当にざっくりですがCROって何?というところをご紹介しました。
参考になれば幸いです。