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【アメリカの大学入学制度】

アメリカのドラマを見ていると、大学に合格している高校生がこんな言葉を口にするシーンがありました。

「大学の入学を一年遅らせるよ」

これを聞いて「一年遅らせらるってどういうこと?大学側が入学を待ってくれるということ?」と、とても疑問に思いました。

また、「浪人する」というセリフ字幕を見た時に「そういや、アメリカって浪人の文化はあるの?」と思いました。

そこで今回は、アメリカの大学入学の日本との違いについて調べてみました。ちょっとした豆知識になれば幸いです。

ギャップ・イヤーというもの

まずドラマの会話の一例をご紹介します。

『天才少女ドギー・カメアロハ』より、カイは大学入学が決まっている男の子です。しかし、飼い始めたペットのお世話をしたいがために、こう言います。

I’m gonna defer for a semester or two. 入学を延期する

defer:先送りする

アメリカの大学はセメスター(2学期)制とクォーター(4学期)制があります。

カイが行く大学はセメスター制であり、「1セメスターか、2セメスター遅らせて入学するよ」と言っています。

どうやらアメリカの大学は入学できることが決まった後に、その入学の時期をずらすことができることがうかがえます。

 

また、『ハイスクール・ミュージカル・ザ・ミュージカル』というドラマで、EJという男の子がこう言います。

he’s not okay with me taking a gap year. 浪人することを許さず

このセリフの”he”はEJのお父さんのことで、「お父さんは私がgap yearをとることを認めていない」といった意味になります。

このgap yearというのが、字幕では「浪人」と訳されていました。

このgap yearというのは、日本語の「浪人」とは意味が異なるようで、他サイトの説明ではこう書いてあります。

ギャップイヤーって皆さんご存知ですか? これは、大学に受かった学生が入学前(あるいは在学中)に1年ほど休学して好きなことをする制度です。

引用:https://www.ryugaku.com/blog/sawa-gap-year.html

日本で「浪人」というと、希望の大学に受からなかったからまた1年勉強に充てるという意味ですよね。

でもこのgap yearというのは大学に入る許可が出ている前提で、好きなことをする期間という意味なのですね。

字幕では日本人が分かりやすい都合上、「浪人」と訳されていたのだと思います。

先ほどのカイのセリフも、このギャップ・イヤーのことを言っていたのですね。

 

 

調べてみると、日本でもギャップ・イヤーを採用できる学校はあるみたいですが一般的ではないですよね。

私が大学入学するときは(大昔ですが)、受かったらその4月から入学するのが当たり前で、入学を遅らせることができるのか?なんて考えたこともありませんでした。

制度があったら自分はどうしていただろう、、と想像してみましたが、同級生に後れを取りたくないという焦りがあると思うので、多分ギャップ・イヤーは取らずにそのまま大学に行っていたと思います。でも、何かやりたいことなど目的がある人にはすごくいいですね。

 

また、ギャップ・イヤーは大学に入ってからでもとれるようです。以下の動画で息子さんがギャップ・イヤーを取ると言っている女性が話しています。

He’s taking a gap year after his first year of college

大学1年生を終えた後にギャップ・イヤーを取ると言っていますね。

女性は息子さんのギャップ・イヤー取得に肯定的に見えますが、この動画自体は”Taking a ‘Gap Year’ Before College: Pros and Cons”というように、「ギャップ・イヤーを取ることのメリットとデメリット」について話しています。

pros and cons:メリットとデメリット

ギャップ・イヤーを取るということは、生活費などのお金の問題や、勉強が遅れるということ、期間中の過ごし方をどうするか、など本人にとっても親にとっても決めるのは簡単ではないようですね。

ドラマの中でも、ギャップ・イヤーを取得することに親や周囲が良く思っていないシーンが描かれていました。こういう制度があったらあったで、悩むものなのですね。

 

 

ちなみに、アメリカでは日本のような「浪人」をする人は少ないとのことがこちら(外部サイト)に記載されていました。希望する大学に入れなかった場合は、コミュニティカレッジに入り、その後希望する大学を卒業するということもできるそうです。

高校生の時の成績があまり良くなかった場合、あえてコミュニティカレッジに通ってGPAを上げてから4年制大学に編入する生徒も結構多いです。この場合、カレッジで稼いだ一般教養の単位はそのまま大学の単位としても利用できますし、何より4年制大学に4年間通うよりも学費を安く抑えることができて一石二鳥という訳ですね。

引用:https://ameblo.jp/halfnojuken/entry-12793324534.html

コミュニティカレッジとは、2年制の公立大学で、学費が安いのが特徴のようです。地域の人のために生涯学習としての場も提供しているようです。

入学試験の時期

また、日本は大学入試共通テスト(昔の人はセンター試験)が年に1回あって、それで運命が決まるところがありますね。

しかし、アメリカはそうではなさそうだと気がついたのが、『天才少女ドギー・カメアロハ』からのこのセリフです。

カイのお母さん:You can still work here on weekends, but you’re signing up for the next SAT.

これはカイの大学入学が決まる前の話です。カイは大学に行かずに農業をやる!と決めて、農場で働き始めました。それで勝手に大学進学のためのテスト(SAT)をすっぽかしてしまいます。

それを知ったお母さんに言われたセリフが上の内容です。「週末はここ(農場)で働いていいけど、次のSATには申し込んでちょうだいね」という感じです。

SATは、日本でいうところの共通テストのようなものです。しかし日本だったらテストをすっぽかしてしまったら丸1年待たないといけないのに対し、SATは年に6回もあるそうです。

なので、「次のSATは申し込んでね」と悠長な(?)ことを言えるわけです。これが日本だったら1年後だから大変な出来事です。

 

 

海外ドラマを見ていて面白いのは、こういった文化の違いに気がついた瞬間ですね。

ちなみにギャップ・イヤーはヨーロッパの学校でも取り入れられているようです。もとはイギリスから始まった制度なのだとか。

ただし国によっては取得率は数パーセントから数十パーセントまで様々なようです。

 

 

蛇足:

ちなみに、アメリカの大学の学費の高騰は深刻な問題になっているようです。

成績が優秀で奨学金が取れればいいけれど、取れない場合は学費ローンを組むことになります。1000万円以上の借金を抱えることになる人もいるようです。その後、さらに低賃金の仕事にしかつけなければ、その返済で苦しい生活を送らざるを得ないという過酷な現実も待っています。

以前、アメリカ大統領選で立候補したバーニー・サンダースという人がいましたよね。サンダース議員が若者から支持されていたのは、公立大学の授業料無償化を訴えていたからなのですね。そのサンダース議員は、2024年の大統領選には出馬せず、バイデン大統領の再選を支持するとのニュースもありました。

サンダース議員は社会主義寄りの考えともいえると思いますが、アメリカの若者の中には現代の資本主義にうんざりしている人も多いと言われます。アメリカがまさか社会主義に戻るなんてことはないと思っているのですが、今後どのような主張をする人が支持されていくのか、2024年のアメリカ大統領選挙に注目したいところです。